この日の東京は肌寒い秋の一日となりましたが、会場は熱気に溢れた雰囲気で、参加者は思い思いに作った変わり筆を走らせながら、作品づくりに励んでいました。
岡本氏は、「どんな作品も文字は線、線は筆。筆を使いこなす技術技量はあるが、筆を変えれば線が変わるのは当然。荒々しい線、優しい線、かすれる線、さまざまな線によって見る人にイメージを喚起させる。この線からのイメージこそが書のメッセージの最大ベース」という。ではその線を起点にして、モティーフ(題材)を考えたら、どのような文字を、どのように書いたら作品になるかが今回のテーマだった。読ませる以前にビジュアルこそが書の書たるところなようだ。
和紙は宣紙で、半切の3分の1ほどの大きさを用意した。まずは筆の特長を知るために各自が用意した筆で墨ののり具合をチェックしていく。通常の筆と違い、墨の含みがないものはなかなか難しい。それでも受講生さんは新たな発見とともに、可能性に満ちたオリジナル作品を次々と追求していきました。
岡本氏のワークショップというものは、何がいいのか、ではなく何を考えてデザインの視点をとらえ、どんな目的で文字の創 作に取り組まなければいけないのかを、これまでの参加者たちは学んだはずだ。
オリジナリティを追求することは、この世界で生き抜くために誰もの課題では あるが、その作品を自身が客観視できることは永遠のテーマではないだろうか。デザイン書道で「人に感動を与える」「お客さんに喜んでいただく」それを目指すというなら、限られた自身の知識に満足することなく、広い視野で社会を見渡す努力や行動力も備えていかなければならないと思う。
岡本氏の4年間のワークショップには、そんなメッセージがあるような気がしてならない。この誌面をかりて、改めて感謝申し上げる次第です。ありがとうございました。