本年度も2015年10月24日(土)東京・五反田のTOCビル地下1階展示ホール141号において、協会主催のJDCAデザイン書道フォーラム2015を開催いたしました。
このイベントは広告デザイン界をはじめ、一般社会へも広くデザイン書道の役割をアピールし、普及発展のために毎年開催しているものです。秋晴れに恵まれた当日は、協会員をはじめ一般の参加を併せた総勢60名の方々にお集りいただきました。
会場には、墨作りに使われる煤を採取する素焼のフタをはじめ、墨の原料である乾燥した膠や墨特有の香料、墨の文字・図柄が彫り込まれた木型も展示されたほか、貴重な和紙の見本帖である「手漉和紙大鑑」も展示されました。
久木田理事長がデザイン書道家を目指す一般参加者らに向けてメッセージ
協会の運営方針や事業内容を紹介後、一般参加者の多くがデザイン書道家を目指す人や、インテリアなどを通して筆文字を楽しんでいる方も多いことから、デザイン書道の向き合い方や取り組み方のコツなど、自身の体験をもとにプチ講義を行ないました。
その中で「デザイン書道は広い意味でインテリア書やアート書、筆文字を楽しむという括りになるケースは多いですが、それはそれで結構。ただ本来、自由な発想で創作する書ではなく、もっと窮屈で地味で苦しみながら文字をクリエイティブする仕事」として紹介。
「人に感動を与える文字を書いていきたいと言う人はいますが、クライアントはめったに感動はせず、むしろダメだしの方が多い。広告業界の仕事は出来て当たり前で、限られた自信と知識に満足することなく、広い視野で社会を見渡す努力や行動力も備えなければいけません。デザイン書道は調和のあるトータルデザインを創造するものと考え、クリエイティブは隅々まで考えた心遣いが必要」など、今後、デザイン書道がサービス業として発展を遂げる期待も示しました。
墨が醸し出す「にじみ」や「かすれ」技巧によって無限の表情が現れる
昭和47年の創業以来、墨をはじめとした書道具の専門店として総合卸販売を展開する株式会社ならや本舗の南八郎会長をゲストにお迎えし、墨や紙を多種にわたり紹介しながら、南氏の墨作りへのこだわりもお聞かせいただいたほか、因州や甲州和紙、和墨、唐墨、青墨などを使用し、墨と紙の組み合わせによる実演も披露していただきました。
実演で使用した硯は、粒子が細かく、短時間で伸びの良い墨を磨る事ができる人工ダイヤモンドの粉末を配合したダイヤ硯です。古墨を磨るのに普通の硯を使うと、力の加減次第で墨の細かい破片が墨液に混じり、濃墨では艶がなく、淡墨では墨の砕片が筆線に現われてしまうのです。
南氏は「墨は時間をかけないと上質なものはできず、良い墨の状態で造ったものは何十年たっても、墨が伸びるもの。」「墨はどの硯で磨るかによって色が変わり、どの和紙を使うか、どの筆を使うかによっても墨のにじみや色合い、濃さが変わります。」といいます。私たちが手軽に使う墨汁には、化合物や防腐剤などの添加物が含まれているため、独特の風合いは出てこないのです。
さらに、日本の墨(和墨)と中国の墨(唐墨)にも大きな違いがあり、和墨は煙煤と高粘度の膠が10対6と煙煤の割合いが多いために墨のおりが早く、黒味が強く出ます。一方、唐墨は煙煤と低粘度の膠が10対12で、膠の割合いが多いために墨のおりが遅く、黒味が出にくいなど、実演を交えお話いただきました。
閉会後は会場である五反田TOCビル内に店舗を構えるならや本舗へ移動。おすすめのダイヤ硯や墨、講演中に紹介された商品などを購入し会場をあとにしました。
その後、南八郎会長を交えて参加者とのレセプションが行なわれ、大勢の方々との交流を楽しむことができました。