第15回日本デザイン書道大賞
残念ながら本年度も「大賞」および「アートバンク賞」の該当者はありませんでしたが、優秀賞には賞状と賞金が、入選には賞状と記念品が久木田理事長から手渡されました。
大 賞/該当者なし
優秀賞/やぐちなおこ さん(埼玉県)
- ひらがな3文字という単純な中にかなとしての特徴をうまく活かしながらロゴとして完成している。懐深く、温かく迎えられる雰囲気。
優秀賞/矢部澄翔 さん(埼玉県)
- 広告のキャッチフレーズとして印象深く効果的。感情表現がよく、呑み手の気持ちが出ている。
優秀賞/入山隆一朗 さん(大阪府)
- 読みやすく全体のバランスが効いて伝統を感じる。
入選/榎本ひろみ さん(東京都)
- 筆画の重厚さとバランスが効いている。
入選/藤田幸絵 さん(兵庫県)
- スマートな無駄のない筆づかいに気品を感じる。
入選/岩科蓮花 さん(静岡県)
- 絵になっている文字の姿、富士の風格を感じる。
アートバンク賞/該当者なし
優秀賞「ぬすく」
店舗ロゴ
やぐち なおこ さん
1976年生まれ。埼玉県在住。 古典書道、近代詩文書を学び、後に石飛博光氏・久木田宏延氏に師事。 「筆文字デザインhanatubomi」を主宰し、筆文字受注制作の傍ら講師業に従事する。 第13回日本デザイン書道大賞にて優秀賞受賞。 この度は優秀賞をいただきましてありがとうございます。 今回の受賞作は、横浜にオープンされました焼酎ダイニングの店舗ロゴの筆文字です。ひらがな三文字を読み易く崩しながらもバランスを保つことで、和モダンで落ち着いた雰囲気のお店に合うように書かせていただきました。 仕上がりを拝見しましたところ、和紙のあかりが温かいエントランスにシンプルに「ぬすく」の文字を置いていただいたことで、筆文字の温もりをより一層引き立てていただけたのではないかと感じました。お仕事関係者の皆様、審査をしてくださった先生方には心から感謝申し上げます。
優秀賞「匠の技」
お酒キャッチフレーズ
矢部 澄翔 さん
埼玉県川越市出身。6歳から書を学び、22歳で書道師範取得。2009年顔真卿顕彰書法展「西安碑林館長賞(大賞)」他、数々の賞を受賞。06年以降、スペイン、NY、中国、韓国他、全国各地で書道パフォーマンスやワークショップを展開中。また、書のシーンの映像監修や題字、ロゴ制作等も多数手がけている。この度は有難うございました。3年連続の優秀賞受賞、嬉しさと同時に身の引き締まる思いでいっぱいです。この文字は、小正醸造株式会社(鹿児島)様の芋焼酎「小鶴くろ」の広告用に制作したもので、力強く表現して欲しいとのオーダーでした。畑から掘り起こされた芋や土の香りが漂うようなデザインの広告を拝見してからの制作となりました。筆の種類を変えながら書くうちに半紙サイズに収まらず、最終的には迫力を出すために半切サイズで制作しました。最終的に先方が可読性を重視した書を選んだのを見て思いました、まっとうに書いても見ごたえのあるロゴを書きたい。デザイン性に頼りすぎず、書作品としても通用するような、そんなロゴを追求していきたいと思います。
優秀賞「匠の技」
酒ラベル
入山 隆一朗 さん
5歳より書道を始める。中国古典などを学び1988年師範資格取得。九州産業大学芸術学部グラフィックデザイン科卒業。タイポグラ フィを中心に学ぶ。 卒業後、大阪へ。印刷会社に3年勤務後、デザイン制作会社にてカリグラファー、パッケージデザイナーとして勤務。現在11年目。書を活かした和モダンなデザイン構築を得意とする。 優秀賞、ありがとうございます。これを励みに今後も精進します。「匠の技」は、2009年三越歳暮用に造られた月桂冠(株)の大吟醸酒です。近畿大学が研究する養殖のクエ。その良質なクエ鍋と共に味わうというコンセプトで開発されました。デザインの方向性は、N・B・商材として堂々としたもの、こだわり感のある職人気質なものということで様々な切り口を検討しました。決定案は、「杜氏が書いた酒造りの秘伝書」をイメージしたもので、その行程をすべて筆書きしました。ざらざらした紙に書き、走り書きのイメージを出し、細かい文字の潰れなどは気にせず、一回目に書いたものをそのまま使いました。落款なども創作で加え、よりリアル感を演出しました。
入選「飛影」
酒ラベル
榎本 ひろみ さん
東京都在住 ロゴデザイン、イラストデザイン等提供するフリーランサーすべて手書きのみ、短期間納入を心がけております。‘97~’02兼慎書道会展かな入選‘06読売書法展調和体入選‘07読売書法展かな入選レストラン看板、ラベルデザイン、イラスト原画他描けるものはなんでも最短で提供しています。 入選ありがとうございます。とても嬉しく今後の活動の励みになります。 入選作品は、笑亀酒造(長野)の清酒「飛影」ロゴです。デザインのご希望は高級感、オリジナル感?とのことで表現方法を考えるのが一番難しかったです。創作方法は、左手で筆を持ち普段かけている眼鏡を外し作業が見えない状態で百枚ほど描きました。どんな作品が出来上がるかワクワクしながらの作業でした。文字という限られた面積の中で依頼者のご希望と自我をどこまでミックスできるかがロゴデザインでの自分の課題のため、日々創作方法を模索中です。今年は作品が商品になった喜び、その作品で初エントリーできた満足感、まさかの入選で得たモチベーションと、飛躍できた年になりました。
入選「つなぐ」
キャッチフレーズ
藤田 幸絵 さん
兵庫県姫路市在住。8歳より書道をはじめ高校時代に準師範取得。広告代理店、音楽関係、手描きPOPライターなどの仕事を経てフリーに。現在WEBサイト「筆の幸」にて筆文字の受注制作を行う。JEUGIAカルチャーセンター講師。 このたびは入選に選んでいただき大変嬉しく思います。ありがとうございます。 「つなぐ」の文字は朝日新聞出版アエラの編集部からの依頼で、ある有名人の方の連載が始まるにあたりそのタイトル題字として制作しました。 連載内容は、旅の中で出逢う日本各地の文化や職人の技をレポートするというものです。書体について特にこれといった細かい指示はなく私には珍しいタイプの案件だったのですが、4案提案し最終的に決定したのが今回の文字でした。決して派手な扱いではなく誌面の片隅に小さく載っているだけですが、連載は昨年9月?現在も毎週続いており幸せな仕事に恵まれたなぁと喜びを噛み締めている次第です。 クライアントに何を求められどんな文字が適しているのか、常に柔軟で冷静な目を持ち制作に取り組みたいと思います。
入選「富士山」
番組タイトル
岩科 蓮花 さん
静岡県出身。大日本書芸院 師範 書道暦27年。書の中に花や動物、建物などリアルなものを取りいれた作風でJAカレンダーもそのひとつ。NHK教育、テレビ東京「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ」、地元テレビ局のコメンテーターを勤める。書道パフォーマンスでは自分の背丈よりも大きい筆を使うことも。 今回、初めての応募です。3作品を出して入選をいただいたのがテレビタイトル「富士山」でした。ポイントは「富」のうかんむりで宝永山とその火口を表現したところです。(実際静岡側から見るとこんな風にえぐれています)。字の形で遊んでいるがちゃんと読めるか?全体のバランスは取れているか?と100枚以上の中から客観的な目で検証を重ね、選んだのがこの一枚です。 今更ですが線の太さ細さに変化を付けたほうがもっと面白い作品になったのではと思ったりもしています。まだまだ自分では満足のいく作品が書けないのでこれからワークショップに参加するなど技を磨いていきたいと思っています。ありがとうございました。
JDCA大賞選考委員
- 荻野丹雪(墨象家) 岡本光平(現代書家)、園家文苑(書家)、 比田井和子(天来書院代表)、 株式会社アートバンク(賛助会員)、 久木田宏延(JDCA理事長)、 中川道代(JDCA副理事長)、 高橋淳子(JDCA理事)、 鈴 鳴月(JDCA理事)