第18回日本デザイン書道大賞入賞作品

日本デザイン書道大賞は、国内外在住の書道家、デザイナー、デザイン書道家など筆文字のエキスパートが、国内外の様々な分野で商品化された書道体の作品から、デザイン性や創造性を競うコンペティションで、作者個人に贈られるものです。本年度は全国から204点の作品が寄せられ、協会内外の審査委員による厳正な審査が行なわれ、入賞作品の8名に賞状ならびに賞金、そして副賞が贈られました。なお、大賞の受賞は11年ぶりとなりました。
大賞受賞者には賞状と賞金10万円、毎日新聞社賞・優秀賞・アートバンク賞には賞状と賞金3万円、入選には賞状が贈られ、すべての入賞者には副賞が贈呈されました。副賞の内容は日本デザイン書道大賞、筆文字で伝えたいことば大賞共に同じく、身延町なかとみ和紙の里様から「半紙60枚」、芸術新聞社様から「墨・最新号」、株式会社あかしや様から「水彩毛筆彩5色セット」、株式会社墨運堂様から「墨汁・書法一品」、株式会社天来書院様から「空海の写経用紙」をご提供していただきました。
大賞寵瑛さん(長崎県)
お酒ラベル「島楽」


プロフィール
寵瑛(ちょうえい)書家。長崎生まれ。6才から筆を持つ。2001年より本格的に書道を学び、師範免許を取得。筆文字ロゴ制作、代筆、教室での指導やイベント出展などで活動中。第57回長崎県展入賞「来場者が選ぶこの一点」に選出される。
この度は、栄えある大賞を頂きまして感激と感謝の気持ちで一杯です。2005年のコンテスト以来の大賞ということで、授賞の知らせを頂きました時にはあまりにも驚き信じられませんでした。でもクライアント様を始め、この商品に関わる全ての方々の想いが通じたのではと、少しずつ喜びをかみしめているところです。この「島楽―TOURAKU―」という商品は、長崎の五島列島に自生する藪椿の酵母と、富江の田尾地区で出来た米を原料にした日本酒です。「楽」の4つの丸い形は椿の酵母や種や花、あるいは稲、あるいは五島の島々など、商品を見る方々が如何様にも想像を膨らませるようデザイン致しました。私は筆文字の1つの点や1本の線から景色が見えるように、また何より線質を大事に文字を慈しみ書いております。今までやって来たこと全てが繋がっているんだということを今回で実感致しました。これからも自分の感性を信じ、誠実に誠実に「書くこと」をやっていこうと思います。本当にありがとうございました。
毎日新聞社賞・入選中村ちひろさん(福岡県)
食品パッケージ(毎日新聞社賞)

食品パッケージ(入選)


プロフィール
アートディレクター、デザイナーとして広告の企画制作、商品開発、企業のブランディングなどの仕事に関わる。1992年より書家として福岡を拠点に国内外での個展活動を始める。和へのこだわりと感性を活かし、店舗計画や空間プロデュース、和のスペースデザインなど活動の場を広げる。
【銀だら】
この度は前回に引き続きご評価頂きましたこと、大変嬉しく思っております。受賞作品の『銀だら』は東京・阿佐ヶ谷の吟醸漬竹八様の商品パッケージのタイトル文字です。佐賀の地酒の吟醸粕を使用したワンランク上の商品を作りたいというご依頼でした。本物らしさを感じて頂けるようできる限りデザインを施さない、文字と落款印のみで表現するデザインとし高級感、上質感を文字に込めシンプルに仕上げました。
【魚菜のじかん】
もうひとつの受賞作品『銀だら』と同じクライアントの新ブランドの商品です。こちらは吟醸シリーズとは対照的にターゲットを若い層にも広げ手にとりやすいカジュアルな商品とし次世代に繋げていく商品の企画です。素朴さとかわいらしさを表現し、親しみやすい商品に仕上げました。これは商品のネーミング案を考えながら同時に描いたものですので、この商品らしさというものがストレートに伝わったのではないかと思います。
優秀賞さくまめぐみさん(東京都)
短編映画タイトル


プロフィール
コマーシャルカリグラファー。筆文字での店舗ロゴ、商品ロゴ、イベントタイトル等多数手掛ける。毛筆のみならず、書き文字、墨絵、筆ペン水彩イラストなど、様々なタッチで幅広いジャンルに対応している。
この度は優秀賞を頂き、大変嬉しく存じます。受賞作品は、フォトグラファー本多晃子氏の初監督作品、短編映画題字です。今回ご縁があって初めて題字を書かせていただきました。音がまだ入らない映像と台本から、映画の内容を読み取り文字に表現するのは難しい作業でしたが、映画に関わる全ての方々の思いをこの文字に込めました。ご評価頂き感謝いたします。これまでの一つ一つの小さな出会いが繋がって、今がある事を実感しております。ありがとうございました。
優秀賞星野友梨子さん(東京都)
食品パッケージ


プロフィール
1982年豊川市出身東京都品川区在住。テレビ番組やドラマのタイトルやテロップ、書籍題字、商品パッケージロゴ、販促デザインなど広告媒体に使用される商業用の筆文字制作している。その他、インバウンド事業、店内壁面装飾なども行っている。
商品のブランドコンセプトは『こだわりの中にある親しみやすさと安心感』です。こちらの作品はパッケージ全体のデザインをさせていただきました。自分の持ち味が生かせる内容ということでいただけた賞だと思うのでメーカー様には感謝の気持ちで一杯です。この賞を今後の活動の糧にして邁進していきます。
アートバンク賞矢部澄翔さん(埼玉県)
雑誌表紙題字


プロフィール
埼玉県川越市在住。国内外で文化交流や書道パフォーマンスやワークショップを展開し、書の楽しさを伝えている。眞墨書道会 代表、東京書作展 審査会員、日本教育書道藝術院 評議員
この度は、思いがけず「アートバンク賞」をいただき有難うございました。「真田丸」はザ・テレビジョン×Walkerの特別編集のムック本の題字用にとオファーをいただきました。イメージを変えたくないので赤土に描かれた挾土秀平氏の題字と離れないようにデザインして欲しいというオーダーでした。フォルムを踏襲しなければなりませんでしたので、筆線を追求して制作しました。いつか大河ドラマのタイトルを手がけたいです。
入選鈴木 愛さん(愛知県)
扇子ノベルティ


プロフィール
現在までに採用された作品は1,700点程。日本デザイン書道大賞にて大賞を受賞。優秀賞を3度受賞。豊橋市文化表彰文化振興賞受賞。河口湖「久保田一竹美術館」ニューヨーク「Ouchi Gallery」にて個展を開催。
この度は光栄な賞をいただき誠にありがとうございます!この作品はアメリカの半導体メーカー「NVIDIA」の日本支社からご依頼をいただきました。男性的なイメージで作って欲しいとのご要望でしたので、羊毛筆を用いてダイナミックに描きました。書き直しなしで採用されとても嬉しく思いました。2002年から2年間久木田先生の元で勉強し独立しました。今もこの仕事を続けていられることに感謝の気持ちでいっぱいです。
入選赤間紫動さん(東京都)
商品ロゴ


プロフィール
東京都出身。2003年にある企業広告を手掛けた事をきっかけに芸術書家として本格始動。広告企画制作・商品企画等を学び、その繋がりからファッション業界・スポーツ業界など幅広い分野にて活動。MURASAKI SPORTS/GLORIOUS CREATIONS 所属。
この様な素晴らしいコンテストにて高評価をして頂き本当に嬉しく思います。ありがとうございました。受賞作品の『一番』は、株式会社ムラサキスポーツのオリジナルブランド「Three Weather」のスケートボード・デッキデザインで採用をして頂いた作品になります。アクションスポーツを表現する為、ダイナミックさは文字の力強さ。繊細かつスピード感は文字の擦れで表現をしました。制作に際しまして、御協力して頂いた全ての方々に感謝したいと思います。ありがとうございました。
日本デザイン書道大賞 総評
- 大賞を受賞した寵瑛さんの作品は、細い線質の構成ながら骨格がしっかりとして、バランス、表現のリズム感、文字の中に地域の風土を感じる文字作品。
- 毎日新聞社賞と入選のダブル受賞の中村ちひろさんの作品は、食品パッケージに重要な製品のコンセプト、イメージを重視し、人に情報を簡単に伝えるためのデザインがされた文字作品。
- 優秀賞のさくまめぐみさん、星野友梨子さんの作品は、それぞれイメージにあわせ、描き出す文字をしっかり探り、理解でき連想できる文字作品。
- アートバンク賞の矢部澄翔さん、入選の鈴木愛さん、赤間紫動さんの作品は、力強い表現の中に無駄の線がなく、躍動感、勢いの魅力を存分に発揮し、創造された文字作品。
日本デザイン書道大賞審査委員
赤松陽構造(映画タイトルデザイナー)味岡伸太郎(美術家/タイポグラファー)岡本光平(現代書家)荻野丹雪(墨象家)來田淳(株式会社アートバンク代表)園家文苑(書家)比田井和子(天来書院代表)美登英利(デザイン書道家/デザイナー)JDCA執行部 ※五十音順